2020年1月2日 ロシア・カザン3日目 市内散策編

ロシア

カザン3日目。カザンに来てからクレムリンしか立ち寄っていないことに気づく。そういえば新年のカウントダウンから同室のタタール女子のインディラとべったりだったんだ….

彼女は楽しい人だし、悪い気はしていなかったがさすがにずっと一緒だと疲れてきたというのは正直あった。この私、他人とずっと一緒に過ごした後1日はガッツリと一人の時間が欲しくなるタイプだ。幸い、インディラは朝起きるのが遅い人だったので朝早く起き、彼女が寝ている間に一人で宿を後にした。物音を出したときに一瞬だけ宿住み込みおばさんがこっち見てきてゾッとしたが何も言われなかった。

この日最初に向かったのは、中心地から少し離れた場所にある「全宗教寺院」。という一風変わった名所があるとのことだったので気になって見ることに。

行き方はいたって簡単。交通手段は鉄道。カザン駅から3駅目のスタロエ・アラクチーノ駅を降りてすぐ。駅のカッサで「スタロエ・アラクチーノ」とだけ伝えればOK。値段は片道で約180円だった気がする。

朝食代わりに(ならない)スーパーで購入したタタール名物のお菓子チャクチャクを食べる。このお菓子、揚げ菓子みたいなやつにはちみつを絡めただけのシンプルなお菓子で余計なものが入っていないので非常に美味い。

車内。早朝というのもあり、空いていた。

最寄り駅のスタロエ・アラクチーノ駅に到着。その周辺にはマジで何もなく、全宗教寺院のためだけの駅のように感じた。

スタロエ・アラクチーノ駅。日本語で表すと「旧アラクチーノ駅」。タタール語ではイスケ・アラクチーノだそうだ。

駅を降りて階段を下り、左方向に進むと派手な建物が見える。それが全宗教寺院である。

これが全宗教寺院(Вселенский Храм)。一見某ネズミのテーマパークにありそうなカラフルな建物だが、これがこの名所所以の特徴でもあるという。「全宗教」という名前の通り、ここはイスラム教をはじめ、キリスト教やユダヤ教、そして仏教やヒンドゥー教等のあらゆる宗教をギュッと詰め込んだ究極の寺院なのだ。屋根をよく見てほしい。キリスト教の十字架とイスラム教の三日月、ユダヤ教のダビデの星が混同しているのが分かるだろう。そのため、ここで特定の宗教の儀式や礼拝をおこなうことはなく、現在は宗教画等のアートギャラリーや博物館として公開されているだけである。入場料は100ルーブル(約135円)。

「水」と書かれた謎のモザイク画

これは多分神社?かな

こちらは言わずもがな、正教会。ちゃんとイコンも飾っている。

さらに奥へと進むと、なぜか古代エジプトの壁画が登場。それも派手な色使いで。

モザイク画には古代エジプト三大美女(クレオパトラ・ネフェルティティ・ネフェルタリかな)らしき女性3人が描かれている。

進んだ先の部屋ではイスラム教関連の芸術作品が展示されていた。その作品のほとんどはムスリムのタタール人女性をテーマにしている。

嘘のようで本当の話だが、この人形のような顔立ちの女性は割と見かける気がする。

2階へ上がる。この辺は仏教とヒンドゥー教などの東洋の宗教関連の展示があった。写真は謎の黄金の木。

なぜかあった日本現代工藝美術というかなり古い雑誌。

仏教の金ぴかの大仏様とヒンドゥー教の神々の銅像が混同した状態で展示されていた。

ここで全宗教寺院の見学は終了。様々な宗教が共存するカザンならではの新しいタイプの寺院で大変興味深かった。カザンに来た人はぜひ立ち寄ってみてください。

しかし、寺院周辺は小さな民家が並びだけだった。

ヴォルガ川もこの通り。当然だが船も停泊している。わずかだが川の上にスキーやスケートをする人の姿があった。

ここから鉄道で帰ろうとしたが、しばらく来る様子がなかったため、バスを捕まえて中心地へ帰ることに。バス停で待っているときに話しかけてきたおじいさんと駅に着くまでずっと話をしていた。

チャクチャクで腹が膨れるわけがなかった。到着後は駅近くのハラール料理店でおせち料理(?)。ラグマン、プロフ、マトンをミンチしたシャシリクwith塩味スパゲティで400円と大変安くてしかも美味かった。ディルとネギはセルフでかけ放題といううれしいサービス付き。

かつて気になっていたカザン・メトロ。遠くへ行く用事はなかったがどんなものか気になっていたので早速利用してみることに。

切符の代わりにプラスチックのようなメダルが出てくる。1枚で24ルーブル(32円)、2枚で54ルーブル(72円)と激安価格で地下鉄が乗れる。

このコインが切符代わりになるので乗車中は無くさないように肌身離さず持っておこう。改札を出るときに回収される。

クレムリンスカヤ駅のホームはこの通り、美術館のような豪華な装飾となっていた。

天井や他の建造物も凝ったデザイン。モスクワ・メトロの各駅のような派手さはないがそれでも、ホームに入った瞬間目を奪われること間違いなし。これのためだけにクレムリンスカヤ駅を利用する価値は大いにある。

イスラム教関連のモザイク画が多いのもカザンならでは。

でも車体は普通だった。走行音もモスクワのそれと全く同じだった。

向かった先はヴォルガ川をまたいだコジヤ・スラヴォーダ駅。この周辺は新年のカウントダウンをした会場であるツェントル・セミ・カザンの近く。周辺の昼間の姿は意外と閑散としていた。あったのは大量の団地だった。道理で中心地に住宅や団地のようなものがほとんど見かけないなあと思った。なるほど、カザン市民の大半はこの周辺の団地に住んでいるのだろうな、多分。キルライ公園があるがそこもほとんど人気はなく寂しい雰囲気を醸し出していた。

結局中心地に戻り、しばらく教会巡りをすることに。

二コリスキー大聖堂。17世紀後半に建てられた。

聖ソフィア門教会。中は見学可能。正教会の中に入る際は肌の露出は禁止のため、入り口に下半身を隠すエプロンのようなものが置いていた。お祈りの邪魔にならない程度に中を見学。写真は撮っていない。

カザン大聖堂。こちらも見学済み。

午後3時前半頃の様子。気が付けばだいぶ暗くなってきた。いい加減疲れてきたし、そろそろ宿へ戻るか。

大通りの明かりがいい感じになっていた。まるでパリのシャンゼリゼ通りのようだ(行ったことない)。

宿へ戻ると、リビングにインディラがいた。早速「ネフスかや、おかえり!いまからお茶しようよ」と声をかけてくれたので一緒することに。いつものように、言ってないのに紅茶を何回もお代わりをしてくれた。インディラに「アリメチエフスクにはいつ戻るの?」と質問したら「明日の昼すぎぐらいに考えている。でもバスまだ予約できてないから早く探さないと。」と彼女。同じだ。私も明日の夜にはモスクワ行きの夜行に乗る予定だったから。「偶然だね、私も明日の夕方ぐらいにカザンを去ってモスクワに戻る予定だよ。」と返しといたが、その後インディラが意外なことを言ってきた。

「ねえネフスかや、私と一緒にアリメチエフスクに行ってみない?私の故郷と両親を紹介したいの。」とのこと。本当だったら一緒に行きたいところだったが、6日には仕事が始まるため5日には日本に帰らないといけなかった。「ごめん、本当はあなたと一緒にアリメチエフスクに行きたいところだけど、6日から仕事が始まるから5日までには日本に帰らないといけないんだ。明日モスクワに戻るのはそのためなんだ」

すると、インディラがこう言ったのだ。

「何をそんなに急いでるの?

彼女にとっては何気ない質問だったが、これを聞いた私はここでハッとした。確かに今までの旅を振り返ると、時間の関係もあって観光地を巡ってあれこれ詰め込んでというスタイルが多かった。仕事が始まり、まとまった休暇が取れる期間が限られるようになると一層そういう傾向になっていった。それはそれで充実はしていたが、限られた日数で1都市の滞在が短期間になるため、薄っぺらでかつ余裕のない旅となっていったというのも事実である(または日数が限られている癖に欲張って複数の国と都市を巡ろうとしていたというのもあるが)。そのことが彼女の言葉によって改めて気づいた。

本音を言うと、半年ぐらい確保してじっくりと旅をしたいよ。1つの都市に長く滞在したいよ。でも定職に就くことによって実現が難しくなり、どうしても急ぎ旅になってしまうのだ。それとも欲張りすぎなのかな。必要以上に何かに追われて急がず、中身のある本物の旅を実現させるためには働き方そのものを変えていく必要もあるのかもしれない(今は働き方は変えられても旅はコロナで無理だが…泣)。働き方改革は旅人のためにあるといっても過言ではない(妄言)!

これがきっかけで自分の旅のスタイルを考え直すきっかけになったよ。ありがとう、インディラ。

次回はカザン最終日とモスクワ行きの夜行旅について書いていく。