あなたは海外旅行先で街を歩いていた時、突然このような言葉をかけられたことがありますか?
チンチャンチョン!!チンチャンチョ〜ンwww
海外経験のある日本人やアジア人であれば、ほとんどの人が言われた経験があると言っても過言ではないと思います。バックパッカー旅民も例外ではありません。
これはヨーロピアンをはじめとする非アジア人がアジア人を蔑称・侮辱する差別用語であり、中国語等のアジア圏の言葉がこのように聞こえるから「チンチャンチョン」だそうです。主に中国系を指していたそうですが、今は日本人や韓国人、東南アジア人も含むアジア人全般を貶す意味合いがあるそうです。
主にイランなどの中東やヨーロッパで多発しており、発言者のほとんどは子供と10代の若者の集団ですがまれに大人から言われることもあります。このせいで、その国のことを嫌いになったり悪い印象を持ってしまう旅人も少なくありません。
もちろん私も言われたことがあります。バルカン旅の時に何度かこのような言葉をかけられましたが、特にアルバニアとコソボ、北マケドニアあたりは酷かったですね笑 以下が私の被害例です。
①アルバニア・ドーラスで子供3人組にすれ違いざまに「チンチャンチョン!」
②ルーマニア・シギショアラで中学生ぐらいの子供3人組から「ヘイ!コロナ!」
③アルバニア・ベラドで若い男女2人組から「チャイナ」
④アルバニア・ジロカステラの要塞前で校外学習に来ていた子供の集団から「チンチャンチョン」
⑤コソボ・ジャコーヴァで子供と若者の集団から何度か「チンチャンチョン」等の言葉
⑥コソボ・デジャニ修道院の帰りでバス待ち時にスクールバスに乗車していた子供から「チンチャンチョン!!」の大合唱
⑦マケドニア・スコピエで信号待ちしている時にバイクの若い男から「チンチャンチョン!」
これ以外にもありましたが、多すぎて数えるのが面倒くさいのでこの辺にしておきます。また、「チンチャンチョン」以外にもいくつかバリエーションがあるようです。
「シンシャンション」
「チャンチョン」
「ヒーハンハンホーン」
「チンチョンチン」
「チャンチュンチョン」
「チーノ」
「チーナ」等様々です。
また、コロナ禍の影響なのかチンチャンチョンに加え、「コロナウイルス!」とか「コロナ!」と言われることも増えた気がします。コロナのパンデミックが中国の武漢で始まったこともあり、中国人あるいはアジア人に対する風当たりがさらに強まったと言う感じですね。おそらく彼らの中では「あいつら中国人がパンデミックを起こして我々を苦しめたのだから差別して当然!」みたいな思考回路が出来上がってしまったのでしょう。レイシストさん達は何らかの理由をつけて人種差別しないと死んでしまう病気でも罹っているのでしょうかね笑?
逆に被害報告多数のイランやフランス、イタリアでは何も言われませんでした。半年間住んでいたドイツですら一回もなかったです。
発言者ですが、大半は3人以上の集団ですれ違いざまに言ってくることが多く、歩行中だけでなくバイク越し、車やバスから言われることもあります。この場合、シチュエーション的に言い返しにくい状態なので非常に悔しい。さらに腹が立つのは連中のほとんどはすれ違い後に振り返ってこちらの顔を見てニヤニヤクスクスしやがるのです。何が面白いんですかね。もはや怒りと悲しみを超えて哀れになってきます。
この場合、単に発言者の無知や無教養によるもので悪気がないのがほとんどですが、それにしても言われた側は当然気分は良くありません。子供ならまだしも、ある程度言って良いことと悪いことの分別が付いてるはずの10代と20代前半の若者やいい歳した大人までこれをやるのですから呆れます。
東欧や中東、アフリカの場合は単純に発言者の無教養から来ることが多く、「チンチャンチョン」が差別用語であることを知らない人も多い。彼らにとってはアジア自体が馴染みがなく、「アジア人=全員中国人=チンチャンチョン」という認識になってしまうのでしょうか。最も中国人は世界で人口も多く世界各国の至る場所にいることからアジア人顔は皆中国人!なのかもしれません。信じられないかもしれませんが、我々が思っている以上にアジアのことを知らない人って海外では多く、人によっては中国や日本がどこにあるのか知らない人もいるのです。人は自分たちの集団の中に異質の存在が混じると不安を覚える生き物らしく、その特性が彼らのアジア人差別(それも無自覚の)を助長しているのかもしれません。無教養であれは尚更でしょう。まあ、これはあくまでも推測ではありますが。
チンチャンチョンは何が不快なのか?
この話題について話すとき「自分が中国人に間違えられたのが嫌なんだろ。これこそ差別じゃないのか」ということを言う人が必ず湧いてきます。
確かにそれは一理あるし、根本的にそういった意識があるのも否定はしません。実際「チンチャンチョン」と言われた日本人は「私は中国人じゃない!日本人だ!」とお怒りの人が多く、その裏には「あの国と一緒にしないでくれ」という本心があるからだとは思うんですよ。日本にも、中国人や韓国人に対する差別もありますし(特にネット上で彼らを指す差別用語は蔓延していますね)、「同じアジア人でも我々は彼らとは違う」という選民意識を持ってらっしゃる方も少なくないです。そう考えると我々もやっていることはあまり大差ないような気がしてきました。
ただ、この問題は単に中国人に間違えられる、間違えられないとかの問題ではないのです。
「チンチャンチョン」は明らかにアジア人を侮辱するために生まれた差別用語であり、なんの用も無いのにそれを見ず知らずの人間に向かって発言することは立派な差別なんですよね。それを言うと「子供のそれは悪気がないから差別じゃない」と言う意見が出るかもしれませんが、子供がそのような無自覚の差別行為をするということは、そうさせている大人がいると言うことなんですよね。大人は子供の鏡と言いますし。
それに、一方的に勝手な先入観で相手の国籍を決めつけて「チャイナ!」とかいうのはもってのほか。中国人はもちろん、日本人や韓国人、台湾人などのアジア人全員に対して非常に失礼であり相手の国に対する敬意に欠けた行為であるのは言うまでもありません。不快になるのは当然です。
それが失礼で敬意に欠けた行為であることを彼らに分からようとしたところで、あまり理解してくれなさそうな気はします。となるとやっぱり教育が重要になるのでしょうね。無知って恐ろしい…
もし言われたらどう対応したらいいのか?
旅先で「チンチャンチョン」と言われた時の対応方法は人それぞれのようです。相手にせず無視する人もいれば、言い返したり注意したりする人や怒り全開の人とかも。
私の場合は無視ですかね。やり返したい気持ちはありますが、何をされるか分かりませんし、少数派で特定されやすいために狙われて報復される可能性もあるので基本は無視、です。もちろん言われたら気が狂うほど悔しいですけどね。
「気にしすぎ」「大したことではない」と言う人がいますが、そう言う問題じゃないんですよね。上記でも記載した通り、これは立派な差別なので「気にしないでいこう」で済んでいい問題ではないと思います。人権問題に対して意識の高い()フランスやドイツですら、アジア人差別には非常に鈍感なことを考えると、これを東アジア人たちが問題提議して抗議しない限りは、この問題は一生続くのではないでしょうか。
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本当は気にせずに過ごせたらいいのでしょうが、やっぱり実際に言われるとなかなかきついものがあります。1、2回だけ言われたならあまり気に留めませんが、何回も続くと地味にストレスになるのです。いつになったら達観できるのでしょうかね…?
自分が差別を受ける側になってしまうこと。世界各地でアジア人差別が蔓延している現実。自分の思っている以上に差別が身近にあること。そして自分自身にもその差別意識が隠れているかも知れないと言うこと。それを知れたことはある意味いい経験だったとは思います。
やはり現地に行って初めて分かることって多いのだと改めて実感しましたね。これだから旅はやめられない。嫌な思いをすることも多いですが笑
それではまた。