2017年3月4日 ブダペストからリヴィウまでの列車の旅 

ウクライナ

3月4日早朝、ホステルを出た。朝だったので誰もいなかった。

列車は7:23分発。かなり早めだ。ブダペスト発、リヴィウ着のこの列車の終着地はキエフで、毎日一本運行している。かつては夜行列車もあったが最近廃線し、現在はこの早朝発のみになったらしい。

日本ではトワイライト・エクスプレスなどの長距離系寝台列車の引退がよく話題になっているが、海外も例外ではなさそうだ。最近はポーランドやウクライナでもIC(インターシティ)などの特急列車が台頭し、鈍行列車が減っている。ロシアならモスクワーサンクトペテルブルグ間を走るサプサンが有名だ。確かに時間短縮にはなったが、なんとなく寂しさを感じざる得ないのも事実である。現代ならではの傾向だ。

終点キエフ行きの列車はブダペスト西駅から発車する。内観は他のヨーロッパ諸国の鉄道駅と変わりはない。 

 

鉄道駅の電光掲示板は眺めるのが結構好き

 

ICもくっついている感じ。Wi-Fiも付いていてグレードはやや高くなるが個人的には面白くはない。

 

 

個室はこんな感じ。少し狭いが一人だけだったのでそれなりに快適だ。

 

車体はウクライナ国鉄だったので少しテンションが上がった。もちろん、おばちゃん車掌もウクライナ人。

ロシア語で挨拶をするとおばちゃんはびっくりした表情で「あなた、ロシア語話せるのね!」 と言った。それ以来はロシア語でやり取りした。ロシア語を使える喜びを噛みしめた。

ちょっとしたテーブルがあり、その上のドアを開けると鏡とコンセントがある。普通、こういう列車には個室にコンセントが無く、廊下にしかない事が多いがここはちゃんとあって何気に感動。 

夜行ではないが、なぜか敷布団をもらった。枕はないのでこの小さい布で丸めたタオルを包んで代用する感じ。 非常に簡易的。この年期の入ったシーツがなんとなく味がある。

なんと無料サービスでミネラルウォーター(негазованаはガスなしの意味)がもらえるのだ。

7:23に列車は出発。驚くほど定刻通りであった。海外の列車は遅れるのが普通という認識があると思うが、旧共産圏の場合、列車やバスはなぜかきっちりと定刻通りに出発するのだ。ロシアもそう。

この日は快晴で気温が高めだったが、個室の中はとても暑かった。それだけが唯一苦痛だったかな。

ブダペストからウクライナ国境までは約3時間弱。ちょくちょく停車しながらも、列車は割りとスピードを出して走っていく。ワゴン車特有の走る音がたまらなく癖になる。

しばらくすると国境付近の街Záhonyに到着。ここで出国審査が行われる。今回の旅の中では最後の国境越えだ。しばらく待つと、審査官が個室に入ってきた。いつものようにパスポートを提出する。審査官が念入りに確認するが、なぜか私の名前を「あいり…あいり……。あいり…」と繰り返し復唱するという謎の行動に出たのだ。結局パスできたが、なんとも言えない気持ち悪さを感じざる得なかった。

またしばらくすると次は別の審査官が入ってきたが、このおっさんは関税検査に来たらしい。すると英語で「現金を見せなさい」と言われる。この時8000フォリントしか無かったが見せた。必要以上の大金を持ってないかを確認するのかと思った一方で賄賂じゃないかとも疑った(ウクライナでは国境付近で賄賂を請求されるトラブルが後を絶たないため)。おっさんは「よろしい」と行った後、荷物検査に移った。こっちは何の問題はなかった。

 ラッキーだったのがハンガリー国鉄のWi-Fiがわずかながら使えたこと。この微々たる電波を利用してFBやTwitterを更新したり、LINEの返信をした。そのため、待ち時間も退屈に感じることがなかった。

 そうこうしているうちに列車は動いた。いよいよ待ちに待ったウクライナだ。国境を超える瞬間である。

そして列車はティサ川を渡り、ウクライナに入国した。会いたかったぜ、ウクライナ!

国境付近。川が凍っているのが分かる。

列車が国境を超えた後、国境付近の街чопの鉄道駅に停車。入国審査が始まり、小柄な女性審査官にパスポートを預ける。返却後見るとしっかりウクライナの入国スタンプが押されていた。列車での出入国のときのスタンプってなぜか鮮明できれい。いざ出発、かと思ったがここから地獄の4時間待ちが始まるのであった。

そう、列車国境越え名物のアレが始まるからだ。

それは、車両点検と車体交換である。鉄オタならたまらない瞬間だろう。

停車中の状態。車両交換中。 その時は頻繁に揺れたり移動したりした。それにしても点検と交換に4時間も費やすんだな…。どうりでリヴィウまで時間がかかると思ったわけだ。

Wi-Fiも飛んでないからネットもできない。あまりにも暇を持て余していたので、持参したkindleに入っている本を読み切ったりロシア語の復習をしていた。4時間経った午後3時頃、ようやく列車は動き出した。

気がつけば個室が自分の部屋化していた 笑 

朝早く起きたせいか、眠くなって途中で寝たり本を読んで過ごしているうちにいつの間にか外はうっすらと暗くなっていた。夜になり、窓の外を眺めるがほぼ真っ暗で何も見えない。街灯がほとんどない。3年前の内戦のせいか、どうやらウクライナでは電力が不足しているらしく。夜はどうしても暗くなってしまうんだとか。かろうじて見えたのは畑を焼くときの火の明かりぐらい。最初に見た時は一瞬火事かと思った。こんな薄暗いウクライナをこれから歩くのかと思うと少し気が重くなってきた。

午後22時少し過ぎた頃、ようやくリヴィウ駅に到着した。15時間という長い列車の旅が終わった。

これが実際に乗った列車の車体。超ウクライナカラー。おなじみの国章もちゃんと入っている。

 

駅のホーム。夜にもかかわらず結構人が多い印象。

到着後、駅を出て早速宿に向かうことに。しかし、トラムはすでに終わっていた。さてどうする、と思っていた矢先に何とか運良く正規のタクシーが停車していたのでそれを利用した。とはいいつつ、この運ちゃんが超絶無口で宿の場所を教えても考え込んでいたので、若干不安ではあったが最終的に運ちゃんはちゃんと宿まで運んでくれた。料金も正常な金額でいけた(70フリヴニャぐらい)。無口だがまともな運ちゃんだった(正規だから当然か笑)。観光都市というのもあり、意外と外は明るめだったが、宿泊する宿の目の前が公園だったためその周辺はちょっと薄暗く、しかも野犬もいた。歩かずにタクシーで移動してよかった。

ここから二週間にわたるウクライナの旅が始まるのであった。