旅で気をつけたいこと 野犬と狂犬病【随時更新中】

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公園でくつろぐ二匹の野犬。ウクライナ・リヴィウ

こんばんは。

今日から旅行記とは別に、旅の注意点について書いていきたいと思います。

今日は、野犬と狂犬病対策を紹介していきます。

旅をしている時、町中でうろついている野犬を見かけることは少なくありません。

特に対策が追いついていない途上国に多く、犬咬傷等の事故も後を絶たず、中には狂犬病で亡くなる人々も多くいるのが実情です。

各国を旅している人にとっては野犬問題は他人事ではなく、もし被害に遭えば今後の旅のスケジュールにも支障が出るかもしれません。

では、野犬による被害を未然に防ぐにはどうしたら良いのでしょうか。

野犬の危険性にあわせてその対策について書いていきたいと思います。

1.  犬咬傷、襲撃

野犬による噛みつき事故は後を絶ちません。これは日本でもあり得る話です。

野犬は昼間は一見おとなしく、ぐーたら寝てるように見えますが、夜になると一変して集団で群がって行動をするようになり、人間を襲うこともあります。また、間違えて彼らのテリトリーに入ってしまい威嚇され、襲撃されるケースもあります。

対策は?

もし、威嚇され、襲われそうになった場合ですが、まずは犬を刺激させないことです。自分から威嚇すると逆効果です。「敵ではないよ〜」ということを見せましょう。必要以上に関わらず無視するのも手です。しかし、背を向けてはいけません。その隙を狙って襲う場合もあります。逃げる場合は走らず後ずさりをしながらゆっくりと逃げます。

しかし、遠くから人間をめがけて襲撃するケースもありますので注意が必要です。

明らかにガチで襲おうとしている場合は、石を投げるフリや、傘を持っていたら広げたり、持っているモノを振り回すと大半は怯みます。攻撃する仕草をすることで自分を「弱く」見せないことも大切です。私はブカレストで野犬3匹に攻撃されそうになった時は傘を持っていたので、この方法で追い払い、何とか助かりました。

もう一つは彼らの活動時間や場所を把握すること。野犬が最も活動的になるのは夜です。ですので、夜間の不要な外出は避けたほうが無難です。場所ですが、私が経験した限りでは、裏道や人気のない場所に出現することが多いです。野犬の中には人間慣れした者もいますが、大半は案外ビビリだったりします。なので、こうした人の少ない場所にいるのだと思います。(キシナウで飼い主と散歩中の小型犬を見てビビって逃げた犬を見ましたw)野犬の少ない観光地や人の多い場所が比較的安全かと思います。

一番してはいけないことは、騒いだり走って逃げることです。絶対に追いかけてきます。

当然ですが、犬は足が4本ありますので走ると人間とは比べものにならないぐらい速く、すぐに追いつきます。絶対に走らないこと。

また、騒ぐと周囲の犬まで刺激してしまいますのでやめましょう。

もし野犬と遭遇してしまった場合、恐怖のあまり冷静さを失ってしまうことがあると思います。パニックにならないためにはまずは事前に対策を考え、頭に入れときましょう。外務省の海外安全情報でも国ごとに野犬に関する注意喚起をしていますのでそちらもチェックしましょう。

2. 狂犬病

野犬に噛まれた際最もリスクが高いのが狂犬病です。狂犬病は旅人にとって最も身近でかつ最も恐ろしい感染症です。海外では感染している野犬も少なくないので注意が必要です。

「狂犬病」と聞くと一見、「犬がとち狂う病気」というイメージがあると思います。確かにそれは間違いではありませんが、狂犬病は犬をはじめ、猫やキツネ、リス、アライグマ、ウシ、ウマ、サル、我々人間も含むすべての哺乳類が感染します。

発生地域

日本国内では1956年の発生を最後に撲滅し、現在は存在していません。ですので、日本では狂犬病と聞くと過去の病気という認識があります。

しかし、実は日本のような地域はごく一部であり、現在でもほぼ全世界で発生しているのです。特にアジアやアフリカで多く、世界で最も狂犬病患者が多いインドでは毎年5000人〜1万人以上の死者が出ています。途上国では主に犬が原因で、先進国では予防接種により犬や猫の狂犬病は対策されてますが、野生動物間の感染は撲滅までには至っていません。それほど完全清浄が困難な感染症とも言えます。

厚生労働省が指定した狂犬病清浄国とされる一部地域は以下のとおりです。

日本、オーストラリア、ニュージーランド、スウェーデン、ノルウェー(スヴァールバル諸島を除く)、イギリス(グレードブリテン島及び北アイルランドに限る)、ハワイ諸島、グアム、アイルランド、アイスランド、フィジー

出典:厚生労働省HP

http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou10/images/map.gif

感染経路、潜伏期間、症状

感染経路は主に狂犬病に感染した犬や猫等に噛まれ、その傷を通してウイルスが含んだ唾液が入ることでウイルスが体内に侵入して脳に向かい、徐々に脳神経を侵します。ヒトーヒト間の感染はほとんどありません。

潜伏期間は早くて1〜2ヶ月、長くて1、2年ですが、噛まれた箇所によって異なり、患部と脳が近ければ近いほどその期間は短くなります。例えば顔や手を噛まれた場合は発症が早く、足の場合は脳に達するまでに時間がかかります。

症状は前駆期、急性期、昏睡期に区分されます。前駆期は咳や発熱、頭痛等の風邪に似た症状、噛まれた傷口が痛む、痒い、物が二重に見える複視等が出現します。風邪と似ているため、狂犬病を疑うことはほぼありません。しかし、急性期に入ると嘔吐や悪寒、不安感が現れ、感覚過敏になるため水や風、光を怖がり(恐水症、恐風症)、大量のよだれ、興奮状態、麻痺、精神錯乱などの神経症状が出ます。この時点では脳細胞の破壊には至っていないため意識はあります。一週間が経つと全神経が侵されて昏睡状態になり、呼吸困難を起こして死に至ります。

発症後の致死率はほぼ100%です。ですので、一度発症したら命はないと思ったほうがいいでしょう。

一部生還したケースもありますがかなり稀です。それ以外の患者はすべて死亡しています。

犬の場合は、初期は性格の変化(活発だった犬が臆病になったり、普段攻撃的だった犬が順従になる等。逆もある)や食欲不振になります。次第に顔つきがキツくなり、石や木の枝、糞を食べるなどの異常行動が見られ、何の目的なく手当たり次第に周辺のものや人に攻撃し、大量のよだれを流します。末期には足取りがおぼつかなくなり、麻痺、衰弱をして心不全に陥り死亡します。

狂犬病に感染した野犬の場合、健康な犬とは違って威嚇なしにいきなり攻撃してくるので大変危険です。しかし、威嚇して襲ってきた犬でもウイルスを保有している可能性がありますので注意が必要です。

もし、疑わしい犬等の動物に噛まれた場合は?

すぐに傷口を水や石鹸で十分に洗い、病院に行きましょう。そしてできたら24時間以内に暴露後の予防接種を受けて下さい。同時に破傷風も受けましょう。予防接種の回数は暴露前接種した場合とそうではない場合で異なります。

事前に接種せず疑わしい犬等に噛まれた時は、医療機関で5、6回に分けて接種します。

予防として暴露前接種をする場合は、3回に分けて行います。噛まれた後は医師の判断によっては5、6回必要な場合もあります。

暴露前接種は保険がききませんが、噛まれた後の接種の一部は海外旅行保険が適用される場合がありますので、事前に確認しましょう。

予防接種は必ず発症する前に行い、決められた回数を最後まで受けて下さい。

予防接種には高額な費用がかかるので躊躇する方もいると思います。

お金と命、どっちが大事でしょうか?

これは言うまでもありませんね。

これで自分の命が救えると考えると高くないはずです。一度発症してしまえば手の施しようがありませんから。

対策は?

1. 野生動物にはむやみに手を出さない

本当にこれに限ります。エサを与えたり撫でたりするもの避けて下さい。特に意味なくふらつく、よだれを垂らしている等の不審な行動、衰弱している動物などには注意をして下さい。また、狂犬病以外にも野生動物には様々は細菌やウイルスがいますので気をつけましょう。

日本人はよく野良猫等を撫でるのが好きな人は多いと思います。それが 国内なら良いですが、海外では事情が全く違いますので、可愛いからといってむやみに触るのは避けたほうが無難です。国内で長年狂犬病の発生がないからかもしれませんが、日本人は動物に対する危機意識がなさすぎるように思います。まずは「外国は事情が違う」ということを認識した上で国内以上に動物には注意を払いましょう。

2.  たとえ飼い犬であっても近づかない

狂犬病は野生動物だけでなく、人間が管理している飼い犬、猫でも感染が確認されているため、安全とは言えません。予防接種が義務付けられていない国も少なくなく、飼い主の意識も高くありません。また、放し飼いが一般的な国もありますので注意が必要です。

3.  野犬などに近づかない、刺激させない、鳴き声がする場所には行かない

これは上記の通りです。

日本で再発生する可能性は?

日本国内では現在、狂犬病は発生していません。しかし、そんな日本でもかつては狂犬病が存在していたのです。

狂犬病自体は昔からあったとされていますが、特に明治から戦後まで大流行を繰り返しました。そこで、政府は本格的に対策を始めます。1950年に狂犬病予防法を制定し、飼い主の登録やワクチン接種の義務化、野犬の駆除を徹底し、その努力の甲斐があって法律制定からわずか7年で撲滅することに成功したのです。

しかし、グローバル化によって人、モノの動きが活発な今日、日本に狂犬病が侵入する可能性はゼロではなくなっています。ペットブームもありますので、海外から狂犬病に感染した動物が持ち込まれる可能性も否定できません。また、近年は予防接種率が減少し、犬以外の動物は法によって義務化されていないという問題もあります。

ロシアからの貿易船が到着する北海道では、船に侵入し、上陸した野犬の存在が確認されています。ロシアは狂犬病流行国ですので、感染した犬がロシアから日本国内に入ってくることも懸念されています。

かつて日本と同じく清浄地域であった台湾でも、2013年にイタチ等の野生動物の間で狂犬病が再発生していますし、日本の近隣諸国では依然として発生が続いているので侵入する可能性は十分にあり得ます。

上陸していない今、我々ができることですが、

ペットを飼っている人は必ず予防接種をしてあげて下さい!

もししなかった場合は違法ですので罰金刑に科されます。

自治体によっては無料でペットの予防接種を実施していますので、必ず確認しましょう。

「日本では発生していなんだから予防接種なんかせんでええやん」、ではなくもし侵入した時のことも考え、予防接種は必ずしましょう。

おっと、少し脱線してしまいました。

大げさに書いてしまいましたが、狂犬病や野犬の襲撃による怪我は海外を飛び回る人にとっては決して他人事ではありません。撲滅して以降も、1970年にはネパールで、2006年にはフィリピンで日本人が感染して国内で発症、死亡する事例がありました。また、2007年にルーマニアに在住していた日本人男性が野犬にふくらはぎを噛まれて亡くなった事件がありました。

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※2023年9月10日追記
2020年5月、フィリピンから来日した外国籍の男性が狂犬病を発症し、亡くなるという事例が日本国内で発生しました。日本での発症は2006年以来ですね。また、2022年のロシアによるウクライナ侵攻によって日本に避難してきたウクライナ人達が連れてきたペットに対して特例の措置を取り議論になりました。(※本来は狂犬病予防法に基づぎ、海外から来た動物に対しては180日間の待機と予防接種、抗体検査が必要)

農林水産省は、これに対して感染対策を義務付けているのでこの措置により感染のリスクが上がるわけではない、的なことを説明したみたいです。とはいえ、近年のワクチン接種率の低下と国外からの侵入リスクがゼロではないことを考えると、大切なペットのためにも感染対策は引き続き継続はすべきだと思います。

今年に入り、コロナ禍による渡航制限が緩和されて海外旅行に行く方が増えてきました。現在でも特に途上国では野犬による被害や狂犬病の感染事例が報告されているので、これからハイリスクの地域に渡航する方は気を付けて欲しいと思います。

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だから今回はその注意喚起を含めて記事にしました。私も野犬で怖い目にあったので、今後旅行にいく時は今まで以上に注意を払いたいと思います。

それでは。

ブルガリアとセルビアの国境付近に現れた野犬

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